旅館業(簡易宿所)はどの用途地域でできる?|住居専用地域で詰まる前に確認したいこと

旅館業(簡易宿所)はどの用途地域でできる?|住居専用地域で詰まる前に確認したいこと
検討中の物件は通知の対象?4つの質問で切り分ける無料チェック

静かな住宅街の古民家を、簡易宿所として通年で営業したい。建物の状態も価格も申し分ない。ところが都市計画図を開くと、その一帯は「第一種中高層住居専用地域」でした。この時点で、旅館業の計画は建物を見る前に止まる可能性があります。

2026年5月28日の通知以降、住宅を旅館業に用途変更するときは、許可の段階で建築基準への適合を書類で示すことが求められるようになりました。その「建築基準」の入り口にあるのが用途地域です。いくら建物を直しても、用途地域が合わなければ旅館業の土俵に乗れません。この記事では、購入前に都市計画図で確かめたいポイントを整理します。

旅館業ができる用途地域・できない用途地域

建築基準法では、用途地域ごとに建てられる建物の用途が決まっています。旅館業(ホテル・旅館。簡易宿所もここに含まれるのが一般的な扱い)について、一般に言われる整理は次の通りです。

旅館業として使えない用途地域

  • 第一種・第二種低層住居専用地域
  • 第一種・第二種中高層住居専用地域
  • 田園住居地域
  • 工業地域・工業専用地域

条件付きで使える用途地域

  • 第一種住居地域:旅館業に使う部分の床面積が3,000㎡以下なら可

旅館業として使える用途地域

  • 第二種住居地域・準住居地域
  • 近隣商業地域・商業地域
  • 準工業地域

個人で買う戸建てや古民家なら、3,000㎡を超えることはまずありません。実務上は**「住居専用」と名の付く地域と、工業系の2地域は旅館業が難しい。それ以外は用途地域の上では検討の余地がある**と覚えておくと、物件探しの段階で大きく外しません。

ただし、これは用途地域だけで見た場合の整理です。次に挙げる上乗せの制限で、さらに絞られることがあります。

用途地域「だけ」で判断できない3つのケース

1. 敷地が2つの用途地域にまたがっている

幹線道路沿いの物件では、道路から一定の距離までが商業系、その奥が住居専用地域、という線引きがよくあります。敷地が2つの地域にまたがる場合、敷地の過半が属する地域の制限が敷地全体に適用されるのが原則です。道路側が商業地域でも、敷地の半分以上が住居専用地域なら、旅館業が難しくなる可能性があります。都市計画図で境界線が敷地のどこを通っているか、面積の比率まで確認したいところです。

2. 特別用途地区・地区計画で上乗せの制限がある

自治体によっては、特別用途地区や地区計画で「この地区ではホテル・旅館を建てられない」といった独自の制限をかけています。用途地域の上では商業地域でも、地区計画で宿泊施設が除外されていることがあります。都市計画図の凡例だけでなく、地区計画の有無を自治体の都市計画課で確認します。

3. 市街化調整区域・用途地域の指定がない区域

市街化調整区域では、建物の用途を変えること自体に都市計画法の許可が必要になるのが一般的です。農村部の古民家や別荘地でよく出てくるケースで、用途地域の表を見るだけでは判断できません。

「旅館業がダメなら民泊新法で」と考える前に

住居専用地域の物件で旅館業が難しいと分かったとき、住宅宿泊事業(民泊新法)に切り替える選択肢が浮かびます。住宅宿泊事業は建物を「住宅」のまま使う仕組みのため、住居専用地域でも届出の対象になり得ます。

ただし、ここに落とし穴があります。多くの自治体が条例で、住居専用地域での住宅宿泊事業の営業日を制限しています(平日は営業できない、など)。年間180日の上限に加えて、営業できる日がさらに絞られることがあります。

想定しておきたい失敗シナリオはこうです。第一種中高層住居専用地域の古民家を、旅館業での通年営業を前提に購入。購入後に旅館業が難しいと分かり民泊新法に切り替えたものの、条例で営業できるのは週末中心に。想定していた稼働日数の半分以下になり、収支の前提が崩れる。購入前に用途地域を確認していれば、価格交渉の材料にも、見送りの判断材料にもなったはずのケースです。

買う前に確認したいこと

自治体の都市計画課に

  • この敷地の用途地域と、境界線が敷地のどこを通っているか → 敷地の過半がどの地域に属するかが分かる
  • 特別用途地区・地区計画でホテル・旅館の制限がないか → 用途地域の表だけでは見えない上乗せの制限が分かる

自治体の建築指導課・保健所に

  • この物件を旅館業(簡易宿所)に用途変更する場合、用途の制限上の問題はないか → 旅館業の土俵に乗るかを、購入前に公式な窓口で確かめられる
  • 住宅宿泊事業にする場合、この地域に営業日・区域の条例制限があるか → 旅館業が難しい場合の代替案の現実味が分かる

まとめ

  • 物件を見る前に、都市計画図で用途地域を確認する。「住居専用」と工業系の地域は旅館業が難しい
  • 敷地が2つの地域にまたがる場合は、境界線の位置と面積の比率まで確かめる
  • 「旅館業がダメなら民泊新法」と考える前に、その地域の条例で営業日がどこまで絞られるかを確認する

用途地域や地区計画の内容は自治体ごとに異なり、変更されることもあります。最新の情報は必ず管轄の自治体で確認してください。用途地域を含めて、検討中の物件が5月28日通知の対象になりそうかは、4つの質問で切り分けられる無料チェックでも確認できます。

https://minpaku-bukken-shindan.com/check/ryokan-tsuchi-2026

無料・会員登録不要

この記事の物件、買う前に診断してみませんか?

物件ページのURLを貼るだけで、民泊・簡易宿所・貸別荘への転用可能性、初期費用リスク、購入前に確認すべき事項を無料で一次診断します。

  • 会員登録なしで今すぐ開始
  • URLを貼るだけ・約30秒
  • 初期費用リスクの目安を確認
  • 購入前に確認すべき論点を整理

特集シリーズ

旅館業×建築基準法(5-28通知)実務編の記事一覧

  1. 住宅を旅館業に用途変更する際の建築基準法適合が厳格化|2026年5月の通知のポイント
  2. 旅館業の用途変更で要る「建築士の適合証明書」とは|検査済証・既存不適格でつまずく前に
  3. 旅館業への用途変更で建築確認が必要になる200㎡超のケース|確認申請の流れと費用・期間の目安
  4. 民泊(住宅宿泊事業)と旅館業(簡易宿所)はどう違う?|5-28通知が効くのはどっち
  5. 旅館業への用途変更で効いてくる建築基準法の規定|防火・避難・階段・採光の要点
  6. 旅館業への用途変更は建築と消防の二本立て|5-28通知の裏で効く消防法
  7. 検査済証がない物件を旅館業にできる?|法適合状況調査という選択肢
  8. 旅館業の用途変更は自治体で運用が違う|保健所と建築部局の連携をどう確認するか
  9. 住宅を旅館業にする前の建築・消防チェックリスト|5-28通知対応の購入前デューデリ
  10. 旅館業の用途変更、どんな建築士に頼めばいい?|設計事務所の探し方と依頼のしかた
  11. 古民家を簡易宿所にする総費用、どう見積もる?|調査・建築・消防を積み上げる
  12. 検査済証がない物件の法適合状況調査、実際いくら・どれだけかかる?|復元図から報告書まで
  13. 旅館業(簡易宿所)許可申請の流れ|必要書類・期間と、建築・消防の揃え方
  14. 【診断事例】築45年・160㎡の古民家480万円を旅館業にするなら|5-28通知対応の一次診断
  15. この用途変更は5-28通知の対象になる?ならない?|まず切り分けたい3つの分岐
  16. 旅館業への用途変更で実際に何を直す?|内装制限・二方向避難・採光の改修内容と費用感
  17. 旅館業許可は建築・消防だけじゃない|申請者側の要件を見落としていないか
  18. 用途変更の設計・工事期間はどれくらいかかるか|許可申請とは別軸のスケジュール
  19. 用途変更で使える補助金・融資の探し方|申請タイミングを逃さないために
  20. 【診断事例】二世帯住宅230㎡・2,480万円を旅館業にするなら|200㎡超パターンの一次診断
  21. 検査済証はあるが古い物件、用途変更はどう変わるか|『あるから安心』の落とし穴
  22. 既存不適格の建物、用途変更でどの規定が『遡及』してくるのか
  23. 民泊新法でも用途変更は必要?|旅館業との違いと、後から切り替えるときの落とし穴

関連記事