表面利回り12%は実質何%か|民泊投資物件を利回りだけで判断してはいけない理由

表面利回り12%は実質何%か|民泊投資物件を利回りだけで判断してはいけない理由

民泊投資物件のポータルでは、表面利回りの数字が大きく表示されています。ただ、表面利回りは「年間想定収入 ÷ 購入価格」で出しただけの数字で、分母(購入価格)には物件を運営できる状態にするまでの初期費用が入っておらず、分子(収入)からは運営コストが引かれていません。つまり二重に楽観へ振れやすい。

言葉で説明するより、一つ試算してみたほうが早いので、表面利回り12%の物件を実質に引き直してみます。数字はあくまで一例で、物件・地域・運営形態で変わりますが、「どこが削られるか」の構造はどの物件でも共通します。

試算:表面12%の物件を実質に引き直す

前提(一例):購入価格1,000万円、年間想定売上120万円 → 表面利回り 120万 ÷ 1,000万 = 12%

まず分子(売上)から運営コストを引きます。

  • 運営代行(売上の15〜20%が一般的な目安):−24万円
  • OTA手数料・決済手数料(合計でおおむね10〜15%):−15万円
  • 清掃・リネン(1回5,000〜15,000円 × 稼働回数):−18万円
  • 光熱・通信・消耗品・保険:−15万円

年間売上120万円から運営コスト約72万円を引くと、手元に残るのはおおむね48万円。この時点で、収益力は表面の半分以下になります。

次に分母(投資額)です。宿泊仕様にするための初期費用——消防設備、改修、残置物撤去、家具家電、許認可手続き——は物件により幅がありますが、中古転用では100〜300万円かかることも珍しくありません。仮に200万円なら、総投資額は1,200万円。

実質利回り ≒ 48万円 ÷ 1,200万円 ≒ 4%。 表面12%が、実質では4%前後まで下がりました。

二つの「見えないコスト」を分けて持つ

上の試算が示すのは、表面利回りが隠しているコストは性質の違う二種類だということです。

  • ストック型(初期費用):消防・改修・残置物・家具家電。一度きりだが、分母を押し上げ、回収年数を直接延ばす。
  • フロー型(運営コスト):運営代行・OTA手数料・清掃・光熱費。毎月の売上から継続的に引かれ、分子を痩せさせる。

表面利回りはこの両方を無視しています。だから、利回りの数字が高く見える物件ほど、その裏でどちらのコストが重いのかを購入前に確認する重要性が増します。とくに運営代行を使う場合、清掃だけ頼むのか、予約管理・ゲスト対応まで含めるのかで毎月のコストが変わるため、検討段階での確認が効きます。

稼働率という、もう一つの前提

上の売上120万円自体も「想定」です。この想定はADR(平均客室単価)×稼働日数で組まれますが、稼働率は立地で大きく振れます。想定稼働50%で組んだ計画が実績30%台になれば、売上は比例して落ち、運営コストの多くは残るため、実質利回りはさらに下がります。表面12%・回収8年と見込んだ物件が、実質4%・回収20年超になる——というのが、利回りだけで判断したときの失敗の像です。

買う前に確認したいこと(利回りの裏を読む質問)

仲介会社・売主に

  • 提示利回りは表面か、何らかのコストを引いた数字か。想定売上の稼働率とADRの前提は? → 売上120万円が現実的な想定か検証できる
  • 直近の修繕履歴と、給湯器・浄化槽など主要設備の設置年は? → ストック型(初期費用)の当たりがつく

消防署・建築士に

  • この規模・構造で、消防設備や改修で見込むべき費用の傾向は? → 分母に乗せる初期費用の幅が出る

運営代行会社に

  • 清掃のみ/予約管理込みで、手数料と清掃費はそれぞれいくらか。周辺の実勢稼働率は? → フロー型コストと稼働前提の現実味が分かる

まとめ|利回りは出発点、実質は自分で組む

表面利回りは物件比較の入口としては使えますが、初期費用(分母)と運営コスト(分子)の両方が抜けた数字です。気になる物件は、①運営コストを引いた手残り、②初期費用を足した総投資額、③現実的な稼働率、の3点で実質に引き直してみる。表面12%が実質4%になることは珍しくありません。概算でよいので自分の手で一度組み、そのうえで専門家の見積もりで固めると、購入後のずれを減らせます。数値は物件ごとに異なり、収益を保証するものではありません。

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