180㎡と220㎡、簡易宿所にするならどちらの物件を選ぶか|面積で変わる総額の比べ方

候補が2つに絞れた。どちらも築30年前後の木造2階建てで、立地もほぼ同じ。違うのは広さで、一方は延床180㎡・1,800万円、もう一方は220㎡・2,000万円。㎡単価で見れば220㎡のほうが割安で、部屋数も多いぶん定員も増やせそうです。
ただ、簡易宿所にするなら、この40㎡の差は「広さの差」だけでは済みません。200㎡という境目をまたぐかどうかで、買ったあとにかかる手続き・工事・期間が変わるためです。この記事では、200㎡前後の2物件で迷ったときに、何を並べて比べればよいかを整理します。200㎡を超える場合の確認申請の流れそのものは、別記事「旅館業への用途変更で建築確認が必要になる200㎡超のケース」で詳しく扱っています。
比べるのは「物件価格」ではなく「開業までの総額」
一般に、住宅を旅館業(簡易宿所)に用途変更する際、用途変更する部分の床面積が200㎡を超えると確認申請が必要になり、200㎡以下なら確認申請は不要とされています。ただし200㎡以下でも建築基準法への適合は必要で、2026年5月の厚生労働省・国土交通省の通知以降は、許可時に建築士の適合証明書を求められる方向とされています(運用は自治体で異なるため要確認)。
これを踏まえて、2物件を次の表のように並べてみます。数字はあくまで一つの目安で、物件ごとに大きく変わります。
| 比較項目 | A:180㎡・1,800万円 | B:220㎡・2,000万円 | |---|---|---| | 建築の手続き | 適合証明書(建築士) | 用途変更の確認申請 | | 設計・手続き費用の目安 | 数十万円程度 | 数十万〜100万円超 | | 特殊建築物としての改修 | 規模に応じて必要 | 規模が大きいぶん増えやすい | | 消防設備 | 面積・定員に応じて | 面積・定員が増えるぶん追加が出やすい | | 開業までの期間 | 数か月 | 確認申請の審査分、長くなりやすい | | 想定定員 | 8〜10名程度 | 10〜14名程度 |
物件価格の差は200万円でも、手続き・改修・消防の差を足すと、初期費用の差は数百万円規模に広がることがあります。一方で、Bは定員を多く取れるぶん、1泊あたりの売上を上げられる可能性があります。
判断の軸は「増える定員で、増える費用を何年で取り戻せるか」
一次診断で2物件を比べるときは、次の順で考えています。
- 開業までの総額の差を出す(物件価格+手続き+改修+消防+開業が遅れる期間の固定費)
- 定員の差が、1泊あたりの売上にどれだけ効くかを見る。グループ客向けの立地なら差は大きく、カップル・少人数向けの立地ならほとんど効かない
- 1を2で割って、総額の差を何年で取り戻せるかを見る
たとえば総額の差が400万円、定員の差による売上の増加が年80万円なら、取り戻すのに5年かかる計算です。運営期間を5年程度と考えているなら、220㎡を選ぶ理由は薄くなります。逆に、大人数の家族旅行や合宿の需要が見込める立地なら、220㎡の広さが強みになります。
もう一つ見落としやすいのが、220㎡の物件を「200㎡以下で使う」という選択肢です。車庫や納戸、オーナーの居住スペースなど、宿泊用途にしない部分を残すことで、用途変更の対象面積を200㎡以下に抑えられる可能性があります。ただし、どこまでを対象から外せるかは建築士の判断が必要で、外した部分を宿泊客に使わせない運用も求められます。
失敗シナリオ:㎡単価の安さで220㎡を選び、開業が半年遅れる
㎡単価が安く、部屋数も多い220㎡の物件を選んで購入したケースを想定します。購入後に建築士へ相談すると、用途変更の確認申請が必要で、さらに未登記の増築部分を含めると対象面積は240㎡になると分かります。設計・申請と改修工事が重なり、開業は当初の予定から半年遅れました。
その半年分のローン返済と固定費に加え、追加の改修費で、180㎡の物件との総額の差は想定の倍以上に広がります。しかも、実際の予約は2〜4名のグループが中心で、定員を増やした効果は限られていました。物件価格と㎡単価だけで比べていたことが、判断を誤らせた原因です。
買う前に確認したいこと
建築士に(2物件の図面を持って)
- それぞれの物件で、用途変更の対象面積はいくつになりそうか。必要な手続きと、設計・改修費用のおおよその幅は → 2物件の開業までの総額を同じ基準で比べられる
- 220㎡の物件で、一部を宿泊用途から外して200㎡以下に抑える計画は成り立つか → Bの物件の総額を下げる選択肢があるかが分かる
地元の運営代行会社に
- このエリアの予約の中心は何名のグループか。定員を増やすと単価・稼働にどう効くか → 広さが売上に効く立地かどうかが分かる
まとめ
- 200㎡前後の物件は、物件価格ではなく「開業までの総額」で比べる
- 定員の差による売上の増加で、総額の差を何年で取り戻せるかを見る
- 200㎡超の物件は、一部を宿泊用途から外す計画が成り立つかも建築士に確認する
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